モーメント母関数
モーメント母関数 (moment generating function) はすべての次数のモーメントを生成する関数である.この関数によってひとつの確率分布のすべてが決定される.モーメント母関数 MX(t) は以下の式にて定義される.
すなわち,確率変数X が連続確率変数のとき,モーメント母関数は以下の式で与えられる.
一方,Xが離散確率変数の場合は以下の式で与えられる.
モーメント母関数の使い方は至って簡単である.行うことは,微分して0を代入することだけとなる.すなわち,変数tからなる MX(t) をtで微分して t=0 を代入する.1階微分して t に0を代入すると確率変数Xの原点まわりの1次のモーメント μ1 が,2階微分の後に t=0 を代入すると原点まわりの2次のモーメント μ2 が得られる.すなわち,以下で示される,モーメント母関数の r階導関数に t=0 を代入した式から各次数の原点まわりのモーメントがわかる.
モーメント母関数の微分と t への0の代入にて各次数のモーメントが求まることは以下のように証明できる.まず,最初の式 MX(t)=E(eX) の括弧内を以下のようにテイラー展開する.
この式を変換するために以下の期待値の変換公式を考える.
これらを利用することで式5は以下のように変形される.
ここで,原点まわりのr次のモーメント μr は μr=E(Xr) で定義される値であるので,この関係を用いると上式はさらに以下のように変形できる.
すなわち,モーメント母関数 MX(t) は t に関する展開式の係数に各次数の原点まわりのモーメントを有する.つまり,この式を r階微分すれば r より低次の項が消え,その後に t=0 を代入すると,r次以外の高次の項も消えることになる.以上がモーメント母関数の r階微分と t への0の代入により r次のモーメントが生成される理由となる.