理論関連事項

統計学の基本事項,確率分布の詳細,各種データ解析法の理論的背景について.

モーメント母関数 (moment generating function) はすべての次数のモーメントを生成する関数である.この関数によってひとつの確率分布のすべてが決定される.モーメント母関数 MX(t) は以下の式にて定義される.

\begin{eqnarray*}M_X(t)=E(e^X)\tag{1}\end{eqnarray*}

すなわち,確率変数X が連続確率変数のとき,モーメント母関数は以下の式で与えられる.

\begin{eqnarray*}\sigma^2=M_X(t)=\int_{-\infty}^{\infty}e^{tx}f(x)dx\tag{2}\end{eqnarray*}

一方,Xが離散確率変数の場合は以下の式で与えられる.

\begin{eqnarray*}M_X(t)=\sum_{x}e^{tx}f(x)\tag{3}\end{eqnarray*}

モーメント母関数の使い方は至って簡単である.行うことは,微分して0を代入することだけとなる.すなわち,変数tからなる MX(t) をtで微分して t=0 を代入する.1階微分して t に0を代入すると確率変数Xの原点まわりの1次のモーメント μ1 が,2階微分の後に t=0 を代入すると原点まわりの2次のモーメント μ2 が得られる.すなわち,以下で示される,モーメント母関数の r階導関数に t=0 を代入した式から各次数の原点まわりのモーメントがわかる.

\begin{eqnarray*}M_X^{(r)}(0)=\mu_r\tag{4}\end{eqnarray*}

モーメント母関数の微分と t への0の代入にて各次数のモーメントが求まることは以下のように証明できる.まず,最初の式 MX(t)=E(eX) の括弧内を以下のようにテイラー展開する.

\begin{eqnarray*}M_X(t)=E(1+tX+\frac{t^2}{2!}X^2+\frac{t^3}{3!}X^3+\dotsb)\tag{5}\end{eqnarray*}

この式を変換するために以下の期待値の変換公式を考える.

\begin{eqnarray*}E(c)=c\tag{6}\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}E(X+c)=E(X)+c\tag{7}\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}E(cX)=cE(X)\tag{8}\end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*}E(X+Y)=E(X)+E(Y)\tag{9}\end{eqnarray*}

これらを利用することで式5は以下のように変形される.

\begin{eqnarray*}M_X(t)=1+tE(X)+\frac{t^2}{2!}E(X^2)+\frac{t^3}{3!}E(X^3)+\dotsb\tag{10}\end{eqnarray*}

ここで,原点まわりのr次のモーメント μr は μr=E(Xr) で定義される値であるので,この関係を用いると上式はさらに以下のように変形できる.

\begin{eqnarray*}M_X(t)=1+t\mu_1+\frac{t^2}{2!}\mu_2+\frac{t^3}{3!}\mu_3+\dotsb\tag{11}\end{eqnarray*}

すなわち,モーメント母関数 MX(t) は t に関する展開式の係数に各次数の原点まわりのモーメントを有する.つまり,この式を r階微分すれば r より低次の項が消え,その後に t=0 を代入すると,r次以外の高次の項も消えることになる.以上がモーメント母関数の r階微分と t への0の代入により r次のモーメントが生成される理由となる.

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